2015-08-25

寺尾紗穂と松井一平 / いしとゆき/幻のありか



時はさかのぼり、2010年。
前野健太さんを聴き込んでいた我々は、「マエケン、マエケン」と勝手に親しみを覚え、やっとのことで都合がついて生の彼を観に下北沢へ向かったのでした。
「消えない歌」というタイトルがついたライヴは、寺尾紗穂さんとのツーマン。
寺尾さんのことをまだなんにも知らず、うたを聴いたのも恥ずかしながらこの時がはじめて。
白いワンピースに身を包み、まっすぐな黒髪の寺尾さんはとっても清楚できれいで、
「なんでマエケンとツーマンなのかな?」なんておもったりして。
でも、その美しい歌声と歌詞の向こうがわに、とてつもなく強いもの、固いもの、
動かそうとしても頑として、そう簡単には動かせない「なにか」を感じました。
その後、ミュージシャンとしてだけでなく、ホームレスの人たちへの積極的な支援活動、雑誌「BIG ISSUE」への参加や「りんりんフェス」の開催、そして舞踏団体ソケリッサとのツアーをはじめ、原発労働者についてただならぬ労力を注いだ取材で書いた著書「原発労働者」を刊行、と、あのとき感じた「なにか」がどんどんとかたちになっていく、いきおいを感じていました。あまりに真っすぐなので、すこし心配になるくらいに。

松井一平さんは、よくライヴ会場でお会いすることが多くて、何年か前からご挨拶するようになりました。たくさんのバンド活動、TEASI、わすれろ草、ネス湖、そしてとくに最近は、画家としてさまざまなアーティストのジャケットを手がけています。
そして昨年にはBREAKfASTにもギターで加入、もう動きっぱなしというかんじ。

そんな寺尾さんと松井さんが、ライヴ・ドローイング「おきば」というイベント・シリーズを始めたと知り、観に行きたいなあと思いつつ行けず、そうしているうちにふたりによるコラボレーションは、どんどんと広がっていきます。

そして今回、正式に「寺尾紗穂と松井一平」としての作品が出来上がりました。
忙しいふたりがメールでのやりとりを重ね、松井さんの詞に寺尾さんがメロディをのせ作った2曲は、どちらも2人に共通するイメージ「か細そうで、でもずっと芯がつよく、絶対にゆるがない」そのもの。
ライヴという、修正がきかない場所での共演と、お互いへの信頼や友情があったからこそ生まれた、他にはない共演かとおもいます。
寺尾さんの美しい歌声、転がるピアノの音のうしろに、松井さんのくるおしいギターがたゆたって、からだにしっとりと染み込んでいくようです。


ジャケットのイラストはもちろん松井一平によるもの、同内容のCDも同封されています。

お店はこちらから→ CLASSICS RECORDS

寺尾紗穂
松井一平

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